「安心・安全を科学する」
2013年1月16日、お茶の水女子大学において、NPO法人WEBREIGOは、千葉大学(千葉大学院、医学研究院)との協働講義による、「安心・安全を科学する」という講義を行いました。
ご参集いただいた方々は、独立行政法人、公益法人、国立大学法人、教育委員会、リスク管理に関心の高い大手民間企業等関係各位のみなさまでした。
インターネットの普及率は急速に進み、平成23年度の総務省、通信利用動向調査においては、13歳から49歳までの利用率は9割に上っており、 参加者においては、使用率100%でした。
「インターネットは普段使用しているが、問題が発生していることすら知らなかった、今日、はじめて聞くことも多く、勉強になった」 との意見が寄せら、インターネットの急速な進歩とともに発生しているリスクについては、 何が問題で、何が危険なのか具体的な問題意識をもっていた方は多くはなかったようです。
文部科学省から発出されている「インターネットの危険項目」についてそれぞれ事例を上げて現状の解説を行い、 続いて、情報管理における安全対策とは?使用者における安心できる環境とは何かなどについて触れ、そして、 対処法について解説が行われました。
参加者からの質問が矢継ぎ早に飛び、迷惑メールが恐ろしいほどくる、ブラウザクラッシャーを受けた経験や、 迷惑なサイトからリンクを貼られた場合の問題、 ネットに誹謗を書き込むと脅された等、事前にリスクとは知らなかったが、 実害は経験していたという方もいらっしゃいました。
なかには、自業自得ともいえるネットの失敗談の披露もあり、 知識・経験や社会的な地位に関係なく、誰でも起きうる可能性のある無邪気ともいえる失敗談に爆笑が巻き起こっていました。
ネットのなりすましについては、ネットの社会は、デジタル・デバイト(情報格差)が発生しており、 知識や社会的承認を持つものへ持たないものが、 依存する心理による反社会的行為とも紹介しています。
この時点で「法の整備を徹底する」「危険なものには近寄らない」「リスクの高いサービスは利用させないのがよいのではないか」との指摘もありました。
学校での教育状況もさることながら、現状をより多くの方に伝えるには、どうしたらよいのかという質問も受けました。
リスクは知らなければ防げないが、知っていれば回避できる可能性があるからです。
続いて、千葉大学による身近な事案を取り上げての科学的事象と社会インフランの両側面を考える必要性について、解説がありました。 短期的な視点での物理的危険性の排除、長期的な視点での教育等。
- 安全とは、受容できないリスクがないこと。
- ものは壊れ、人は間違える。
- 安全は、リスクを許容可能なレベル(社会が決める)まで低減させることで、達成される。
- 許容可能なレベルとは、便益>リスク
- 企業は、リスクを評価し低減する努力を行って安全な環境を提供する。
- 各種の安全規格 ← 社会が承認
- 安心の評価は個人によって異なる。
- リスクを受容できるレベルが、個人によって異なる。
- 誰がリスクを負うのか。
- 便益の認識の違い。
- リスクへの知識の違い。
等の視点の講話でした。
参加者の中から、
- 「危険管理に対して、今までは行政にまかせてその結果に文句をいっていればよかったが、自分で情報を収集し、自分でも、判断するときがきたと思います」
- 「より信頼できる情報を発信する人が必要になってきた」
- 「危険は自分だけでは防げないが、安心は自分の力で勝ち取ることができる」
- 「どうしたら安全かをもっと教えてほしい」
- 「絶対安全を求める人が多く、現実と乖離している」
- 「危険を予測できる能力を高める必要があるのではないか」
- 「スキルがないと生きていけない時代になるかもしれない」
といった声が寄せられました。
みなさんが不安に思うことに率直に向き合い、自らの不安に立ち向かい、 自身の力で乗り越えて、不安を解消できたとき、それは、安心にかわります。 安心・安全は、科学できたのでしょうか。